

「まさか自分が裁判所に行くことになるなんて…」多くの人がそう口にします。家庭内の揉め事、相続問題、契約トラブルなど、争いごとは特別な人のものではなく、ごく普通の生活の延長線上にあるものです。パパ森は27年間、裁判所書記官として現場で数多くの当事者対応をしてきました。「怒り」、「悲しみ」、「困惑」…さまざまな感情が渦巻く中で、「この人はトラブルを引き寄せてしまっているな」と思う人もいれば、逆に「この人はうまく争いを避けてきたのだろうな」と感じる人もいました。今回の記事では、裁判所の現場で見えてきた「争いを防ぐ人」の共通点を5つの視点から紹介します。人間関係、家族関係、職場やご近所付き合いにも役立つ「争わない力」を、ぜひあなたの日常にも取り入れてみてください。
共通点1:感情を言語化する力がある
争いがこじれる大きな原因のひとつに、「感情が伝わらないまま、相手を責めてしまう」ことがあります。たとえば、「なんでそんなことするの?」という一言の裏には、「私は傷ついた」「不安だった」という感情が隠れていることが多いのです。しかし、それをうまく言葉にできないと、怒りや皮肉となって表に出てしまいます。争いを防げる人は、「私はこう感じた」と自分の感情を冷静に言葉にする力を持っています。
これは、自分を理解し、相手にも伝える力=「自己表現力」とも言えます。感情をうまく伝えられる人は、相手との誤解も減り、無用な衝突を避けることができるのです。
・「イライラする」ではなく、「私は〇〇されて悲しかった」と伝えましょう。
・感情と行動を切り離して考えるクセをつけましょう。
・日記やメモで気持ちを整理する習慣をつけましょう。
共通点2:相手の立場に立って考えられる
裁判所では、「自分が正しい」と信じて疑わない人が多く現れます。しかし、争いを避けてきた人たちは、自分の主張を通す前に、相手の視点から物事を見ようとする柔軟さを持っていました。
たとえば、ある遺産分割の話し合いで、他の兄弟に多めに譲った人がいました。「母を長年看病してくれたから、感謝の気持ちを込めて」という言葉には、誰もが納得し、話し合いは穏やかに終わりました。
・「相手がなぜそう言うのか?」と問いかけてみましょう。
・相手の背景(状況・価値観)を想像してみましょう。
・一歩引いて、俯瞰する視点を持ちましょう。
共通点3:合意形成のプロセスを大事にする
争いを防ぐ人は、「内容が正しいか」よりも、「どう合意に至ったか」を重視しています。
裁判所では、「言った・言わない」「約束した・してない」といった、曖昧な合意がトラブルの原因になることが非常に多くあります。争いを避ける人たちは、小さな取り決めでも「紙に残す」「LINEで確認する」といった記録を残していました。
・お金や約束事は、書面やメッセージで明確に残しましょう。
・話し合いの場では議事録的なメモを共有しましょう。
・合意の過程(納得して決めたか)を大切にしましょう。
共通点4:感情を一度寝かせる習慣がある
怒りのままにメールを送ったり、電話で言い争ったりしてしまうと、話がこじれやすくなります。
争いを防ぐ人たちは、感情が高ぶったときこそ「一晩置く」「一呼吸おく」という“時間のクッション”を上手に使っていました。冷静になってから考えると、「言いすぎなくてよかった」「違う言い方ができたかもしれない」と思えることは多いもの。これはまさに、「感情のコントロール」と「自分との対話力」のなせる業です。
・怒りや不満を感じたときは、まず深呼吸してメモに書きましょう。
・返信はすぐにせず、翌日に見直してから送るようにしましょう。
・「その反応、今すぐ必要?」と自分に問いかけてみるといいです。
共通点5:相手との線引きができている
争いを防ぐ人は、過剰に相手に踏み込みすぎたり、自分の価値観を押し付けすぎたりしません。 一見ドライに見えることもありますが、「相手の問題と自分の問題を分ける力」があるのです。
たとえば、家族間で「何でもやってあげる」ことが逆にトラブルのもとになったケースもあります。手伝った結果「感謝されない」「当然だと思われた」と感じて、不満が爆発する…という流れです。
・相手の問題には「できる範囲で」と線を引くことです。
・「助ける」と「依存させる」の違いを意識しましょう。
・自分の気持ちを守る境界線=「バウンダリー」(境界・限界)を持ちましょう。
おわりに
争いを避ける人は、特別な知識や地位を持っているわけではありません。共通しているのは、「自分と相手を大切にする姿勢」と「感情との付き合い方」であり、争わない人は、「賢く・しなやか」です。
裁判所で多くの事例を見てきたからこそ言えるのは、「争いは、起きる前に防げる」ということ。そしてそのためには、日常のちょっとした習慣や、心の持ち方がとても大切なのです。
家族、友人、職場、地域・・・あらゆる人間関係において、トラブルを未然に防ぐ力は、あなた自身の人生を穏やかにする最大の武器になります。ぜひ、今日からできることをひとつ、取り入れてみてください。
本記事は、裁判所勤務の経験をもとに一般的な情報を提供するものであり、法的なアドバイスを行うものではありません。具体的なトラブルについては専門家への相談をおすすめします。
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では、今回はここまでにしたいと思います。
また次の記事でお会いしましょう。
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